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Performance and Innovations

微小で高性能な次世代光源、Tunable VCSEL

 

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VCSELとは

VCSELとはVertical Cavity Surface Emitting Laser の略で、半導体基板と垂直方向にレーザ共振器を構成し、光を垂直に出射するレーザです。1977年に元東京工業大学長の伊賀健一博士によって発明され、現在ではデータ通信やセンサなど幅広い分野で利用されています。特に携帯電話の顔認証用のセンサとして用いられていることでも有名です。端面発光型のレーザと比較すると半導体プロセスのみでほぼ最終形態まで仕上げられるため、優れた量産性、高密度2次元アレイの実現、極低閾値での動作など数多くの利点があります。波長も青色や赤色などの可視域から中赤外域まで実現されており、アプリケーションも多岐にわたります。

MEMS技術との融合による santecのTunable VCSEL

光薄膜技術
図1. Tunable VCSELチップの外観写真

VCSELと同じく半導体プロセスで作製されるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)は、光可変減衰器などでも使用される通り、光との親和性が非常に高い技術です。当社ではVCSELの共振器片側の反射面をMEMSミラーに置き換えることで、Tunable VCSELを実現しております。MEMSデバイスは応答性にも優れており、数Hzの低い周波数から400 kHz程度の高い周波数での波長掃引を実現しています。VCSELはその非常に短い共振器長により、いずれの掃引周波数でも広い波長帯域にわたってシングルモードで発振します。図1は当社で作製したVCSELチップの外観写真です。電流励起型のVCSELと静電駆動型のMEMSを組み合わせたシンプルな構成で、VCSELへの注入電流とMEMSへ電圧を加えるだけで、シングルモード高速波長掃引型レーザとして機能します。

SS-OCT用光源への応用

SS-OCTを実現する光源において、波長の掃引周波数、波長可変帯域およびコヒーレンス長の3つが重要な要素となります。当社のTunable VCSELはSS-OCT用に最適化して開発され、波長掃引周波数 400 kHz、波長可変帯域 88 nm、コヒーレンス長に関してはVCSELのシングルモード性の恩恵を受け 100 mを超える特性を持っております。図2にTunable VCSELを用いて取得した眼の断層画像を示します。特に白内障手術で必要とされる眼軸長測定に対して、白濁が進行した患者様においても従来方式に比較して眼の全体像を得る事ができ、眼内レンズの正確な選定が行えます。また、従来光源では波長の掃引周波数は組立時に固定され、その後に変更することはできませんでしたが、Tunable VCSELではMEMSの制御信号の調整により自由に変更することができます。これによって複数の機能を有するような自由度の高いシステムを構築することも可能となります。

図2.全眼のOCT画像

自動運転に欠かせないLiDARの実現に向けて

光薄膜技術
図3.FMCW-LiDARシステムでの観察例

Tunable VCSELの更なる応用としてFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)-LiDARへの適用も進めております。FMCW-LiDARとSS-OCTシステムは、基本構成に共通した部分が多く、これまで構築されたSS-OCTのノウハウを活かすことが出来ます。従来のSS-OCTの観察距離は、光源性能の制約から最大でも20 mm程度でしたが、Tunable VCSELを用いることで数mを超える観察距離を実現しており、図3はその観察例を示したものです。自動運転やマシンビジョンなどLiDARの適用が期待される分野は幅広く、当社のTunable VCSELを用いたFMCW-LiDARがその実現に貢献できるよう、これからも開発を進めて参ります。